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印度リンゴ

懐かしい響きです。子供の頃、林檎といえば紅玉のように固くて・すっぱい林檎の中で、
大粒で少し黄色みがかった薄紅色のうつくしい「印度リンゴ」は、高級果物でした。
ですから、普通の八百屋さんにはありません。新宿の高野フルーツ店や銀座千疋屋の店先
に並んでいるか、上野の美術館に飾ってある「静物画」のなかに美しく色づいているくらいで
しょうか。
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とはいえ、私の子供のころ(昭和30年代)は、「バナナ」も「モモの缶詰」も、元気な子供の口には けして入らない食べ物でもありましたから、「印度リンゴ」はお客様と一緒にやってくる幻の林檎でした。それでも1・2度、とても甘いけれど、ほとんど汁気のない林檎だったことを覚えています。

私の中では、その「印度リンゴ」は珍しいけれど何処かで売っているはずの林檎だった
のですが、実は本当に「幻の林檎」になっていたのだと知りました。
フジという品種に押されて、70年代末にはついに、農林統計からもその名が消えてしまった
のだそうです。

そんな中で、弘前に樹齢70年の印度リンゴの樹が5本残っているのだとか。
毎年「。『印度リンゴをぜひ』『死ぬ前にもう一度食べたい』というお客さんがいて、都内や横浜
方面にも送っています」という記事を見て、様々に思うことがありました。

人は、自分がこの世の滅びの流れのなかにいることを自覚しはじめるほどに、滅び行くもの
に愛着を強めていくように思えます。特に、人の心の記憶の中に住み着いた「味」や「香り」は、肉体が老いるほどに「印象を強く・鮮明にしていく」のではないかと、亡くなった父の姿や
今の自分からも感じています。

「今さら求めても得られないものだと知りつつ、だからこそもう一度欲しい」という思いが、切実
さを増してくることが、老いるということでもあるのでしょうね。

だとすると、肉体が若くても「得られないものほど欲しがる思い」が強いほど「思いが老いている」ということになるのでしょうか・・。
お釈迦様は、それが「求不得苦」(ぐふとっく)という「苦しみ」なのだと教えてくれていますが、
私たちは本当になんと沢山の「求不得苦」に埋もれているのでしょう。

そんな私たちだから、ほんの少しだけ「足ることを知る」ことで、清清しい満足感を感じられる
のかもしれません。

林檎から話が逸れてしまいましたが、「ないものをねだる」苦しみを知っているから・・だから
こそ「今あるもの」を大切に有難く思えた時の喜びは、心に深くしみいってきますね。
印度リンゴ_d0065364_3555985.gif
そろそろ甘酸っぱい「林檎」の季節です。
数個の林檎の香りが、部屋いっぱいの清涼剤になる素敵な「林檎」の季節です。
by rolferK | 2005-10-29 03:55 | 季節・ガーデニング

主婦からRolferとして人生再建して18年経過。からだのこと・・そして、マイペースに思いつくまま・・。


by rolferK
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