2005年 07月 17日
浴衣は後ろ!
なにかどこかのお祭りなのかしら・・?それとも、ファションとしての楽しみなのかしら・・・?
なにはともあれ、なかなかに好ましい傾向だと思っている。
ところが、梅田にむかう地下鉄に乗り合わせた「キラキラ」の浴衣娘が、正直すっとんでいって
着付けのお直しをしたくなるくらい、不思議な様相だった。
ピンク系にコーディネイトされた浴衣姿は、そのまま一昔前のアイドル系の舞台衣装のように
「ブリッコ」でまとめられている。髪にはフワフワの羽飾り付のピンクのコサージュ、ネイルも
勿論念入りにピンク。金色の柄のついたピンクのレース付日傘を右手に持って、左には勿論
ピンク・フリフリのレースのバッグ。
ドアを入ってくるなりその華やかさに目がいったが、普通ならそこまでで「ファッションの自由」
好きで似合ってたらOKですんだにちがいない。
ところが、彼女がドアのガラスに向かって、地下鉄の暗がりに映る自分の姿を見つめつつ、
襟をさわったり髪をいじったりしている、その後姿が気になってしかたがない。
思わず駆け寄っていって「お直し、手伝いましょうか・・?」と声をかけたい衝動にかられた。
彼女の着こなしを前からみれば、なるほど「昔風の着付け」では考えられない「遊び心」が
あちこちに伺えた。似合ってさえいれば、それはそれでいい。
ところが、こと後ろ姿となると「どうしたの?」と訊きたいような様相なのだ。
浴衣の背が、まるで空気をはらんだ紙風船のようにふくらんでいる。その下に、本来なら
兵児帯が垂れるくらいの高さに「作り帯のお文庫」がだらしなくぶらさっがたように差し込ま
れていて、その帯の下にあるはずの「おはしょり」が前帯の下にわずかに見えるだけで、
後ろにはわずかばかりも残っていない。その代わり、お尻周りにシワシワの細かいギャザー
が寄っている。
よけいなお世話とはわかっていても、どうにも納得がいかない。
内心ハラハラしながらも、やがて前姿の点検が完了すれば、その次に後姿の点検になって
自ずと「恥ずかしい~」なんて、あわてて後ろのあちらこちらに手を回すに違いない・・と、
一人勝手に決め込んで彼女の姿を視野に感じながら、その時を待っていた。
ところが、ひととおりの前点検が完了すると、あきらかに満足げにクルリと向きをかえると、
そのままドアに背をもたれかけてメールかなにやらの点検が始まってしまった。
「オイオイ・・これからだろうが・・!」という私の視線に気づくわけがないが、それにしても
「貴方は前からしか自分の姿を見ないけど、周りにいる私らはあなたを360度でみてるのよ」
と、本当に申しあげたい思いが今日まで残ってしまった。
私とて着付けを習ったわけでもないから、綺麗に着付けられるわけではないのだが、それでも
一通りの抑えどころは知っていると思う。 この抑えどころさえ抑えれば、昔の着慣れた
ご婦人がたは、けっこうザックリと着物をお召しであったと記憶している。
まして浴衣はあくまで遊び着。「楽で楽しく」が当然だ。だけど・・・ねぇ。
襟足・襟のぬき具合・帯の形・おはしょりの始末・背縫いの線・裾からみせる踵の多少・・・
そんなちょっとの心遣いが、「浴衣」を涼やかに・色っぽくみせるもんだと思っている。
正直、その彼女だけじゃないけど、後姿がただの「ねまき」になってる姿を見ると、せっかく
頑張ってキメテルだけに「勿体無い!」の一語につきる。
これも、普段からのクセのもんだと思いますから、いかに普通のお嬢さんが「自分の後ろ」を
感じていないか・・ということでしょう。
ただ、「着物は後ろ」できめるもんだから、めっぽう目立っちゃうんでしょうね、きっとそうです。